収納というと、まず収納する場所があって、そこに何を入れるのかを考えるのが一般的ですよね。注文住宅ではそれが真逆になります。どんなモノを収納する予定があるのかをイメージしてから、収納場所を作ることができるんです。
でも、今考えている間取りに収納量が本当に足りているのか、何をしまう想定でいるのかを漠然と考えるのは難しいですよね。実際にお家作りを経験した私が、収納について考えた方法を紹介します。ぜひ参考になれば嬉しいです。
注文住宅では「収納の考え方」が重要
自由度が高いからこそ“考え方”次第で、快適さが変わるから
昨今、カップボードは食器を収納するだけでなく、ゴミ箱の収納スペースとして確保されています。また、カップボードの上の吊り戸棚を止めて、飾り棚として活用されるケースも多いようです。
ゴミ箱のように、収納できるモノはなるべく収めたり、吊り戸を無くして余白を楽しむことがトレンドです。しかし流行に踊らされてはいけません。

ホテルライクなお家に憧れがあるの。
生活感のある家電や雑貨類は見えないように収納したいな。

僕は本を読むことが好きなんだ。漫画も好きだから
本棚は多い方がいいな。

記念写真を撮るために、何もない余白の壁がほしいな。
家族写真や額縁を飾る棚も欲しい!
これらが、“考え方”次第で快適さが変わる部分です。
食器をコレクトすることが好きで収納量を重視したいなら、壁全面収納にしたり、一部はショーケースのように見える収納にしてもオシャレですよね。
または、生活感を出したくない。スッキリ見せたいならパントリーやカップボード、キッチンの背面収納などをフル活用して、隠せる収納にするといいかもしれません。
家事楽を優先するなら、カップボードの奥行きを広めに取り、作業台として使えるようにしたり、通路幅を広くして複数人で作業できる空間なんて素敵ですね♪
自分達が何を求めているのか、その空間をどのように過ごしていきたいかで、「収納」や間取りが大きく変わってくるのが伝わったでしょうか。
収納が生活導線・家事動線に直結する
収納が、生活や家事動線に直結するとはどういうことでしょうか?
極端な例で説明してみます。
●洗濯をするのに、洗濯洗剤がリビングのパントリーにある
●掃除機をかける時に、掃除機を寝室から取りに行く
●筆記用具が、リビングの近くにない
●買い物から帰ってきて、家の一番奥にある冷蔵庫や収納まで歩く
みなさん想像してみて下さい。毎日洗濯する度に脱衣所から、リビングに行って洗剤を取りに行くなんて無駄導線ですよね。リビングで書き物をしたいのに、筆記用具を寝室に取りに行くことなんてありませんよね。
ちょっとオーバーな例を出してみてしまいましたが、収納場所が生活や家事に直結するとはそういうことです。日々の暮らし易さや快適さに、思っているより「収納」が関わってきます。ここをミスしてしまうと暮らしにくい家になってしまうんです。
収納を「モノ」ではなく「行動」から考える
モノを基準にすると収納が増えすぎる
基本的には「今ある物の量」を基準に収納を考えます。もう一つ考えてほしいのが、行動を基準とした収納です。
行動(使うタイミング・場所)から収納を設計する例を紹介します。
例1:子どものランドセル収納 → 帰宅導線に設置
帰宅してからの導線を考えて見ましょう。玄関を開けて→荷物を下ろす→洗面所に行って手洗い→リビングへ。だとすると玄関もしくは洗面所に行くまでの導線で収納があると良いですね。リビングでランドセルから荷物を出し入れすることを考えると、玄関は止めた方がいいかもしれせんね。
例2:キッチン横のパントリー → 動線を短縮する設計
キッチンとパントリーとの距離は、短ければ短いほど家事楽になりますね!キッチンの真横や後ろにパントリーがあると理想的です。また、玄関からパントリーまでの距離が短いと荷物の出し入れが便利になりますね。
このように導線を考えて、収納を考えていくと必然的に「収納の役割」が決まります。
ランドセルや鞄を入れるための収納。食品を入れるための収納、書類を入れるための収納。役割が決まっているということは、物の持ち場が決まっているのでモノであふれることがなくなるメリットがあります!
家族構成・ライフステージを想定した収納計画
子育て期、夫婦二人、老後、それぞれで必要な収納が違う
子育て期
子育て期は、乳幼児期(0~5歳)・少年期(6~14歳)・青年期(15~24歳)でも収納のあり方がことなります。
乳幼児期では、ミルクやオムツ、着替えなどがリビングの手の取りやすい場所にあるとお世話がしやすいですね。
少年期では、自分の持ち物を自己で管理するようになります。個人の部屋を持つようになりプライベートを確保する部屋を設ける場合が多いでしょう。
青年期では、自己で金銭管理も行うようになることでモノが増えたり、部屋をカスタマイズして収納することができます。
このように子供部屋は成長に伴い、収納するモノや量、場所が変化していきます。だからこそ、子供に関する収納はシンプルにして、収納ケースやワゴンを利用して可変しやすくすることがポイントです。
夫婦二人
変化するのは子供だけではありません。夫婦でも働き方が変われば、生活も変わります。昨今ではリモートができる仕事も増えています。転職する可能性があるなら、仕事部屋として使用できるスペースがあると良いでしょう。
例えば、普段は本棚や趣味のモノを置いていて、いざ在宅仕事へ移行したら、机やパソコンが置けるようになっていると良いですね。
夫婦二人で、収納に対する価値観が違うパターンが多いと思います。衣服の収納スペースを確保したい妻と、キャンプなどのアウトドア用品の収納を確保したい夫といったようにです。
ここはお互いに寄り添って考える必要がありますね。
老後

注文住宅を考えていると、つい「今」にフォーカスが当たりがち。
職業柄、高齢者のお家での生活を考えることが多い私達は、老後のこともしっかり考えました。
マイホームは今後30年~60年か、はたまた子供に引き継いで100年先も住んでいく場所です。せっかくのマイホームですから、老後も住み慣れた居心地の良い我が家で過ごしていきたいですよね。
老後での収納の考え方としては、距離・高さ・見えるです。
1つめが「距離」。身体が老いれば、足腰が衰え長距離の歩行が困難になってきます。そのため、生活している中でできるだけ近くに必要なものがあることがポイントです。
2つ目に「高さ」です。腰が曲がってきたり、肩が上がらなくなることを考えると、吊り戸棚や高い場所への物干しは困難になってくるでしょう。腰の高さでの収納を確保しておくと安心です。吊り戸棚に関して言うなら、食器をカップボードに収まる量に減らしたり。物干しは置き型の干し竿が売っているので、可変することができますね。
3つ目が「見える」。これが意外と忘れがちです。老化により認知機能の低下が推測されます。どこに何を置いていたか忘れてしまうのです。入れ歯をどこに置いたか忘れた、家族もどこに置いてあるか分からない、なんてよくある話です。
➡入れ歯ケースに入れて、棚の引き出しに入れて、扉を閉めるなど。取り出すまでの過程が増えるほど、分かりずらくなってしまいます。
➡ケースの中に入れて、置くだけ。これがシンプルです。

パントリーの収納の画像です。このようにBOXに入れて中が見えないようにして、スッキリ見せることが流行りです。まさに見えない収納なので老後は可変する必要がありそうですね。

紛失しやすいモノといえば、リモコンや携帯、充電器、財布、鍵など細々としたモノが多いです。
全てを机の上や棚に置くだけだと、モノで溢れてしまいます。「見える」のポイントは扉がないこと。そして仕切りがあることです。画像のようなインナーボックスだと、箱の中に仕切りがあるので、これ一つでリモコンや携帯などの細かいものを収納することができます。
他にも透明な収納ケースや仕切りケースなどを利用し見える収納に可変していくと良いかなと思います。
扉だらけのお家になっていませんか?敢えて見える収納のスペースを確保しておくと老後のためにはいいかもしれませんよ。
「可変収納」や「将来の増改築」を見据えた設計のコツ
前述したように、家族構成や将来を見据えるとマイホームは「可変」できることが必須となってきます。
「可変収納」としては、ワゴンやカラーボックスの購入が最もシンプルで変えやすいですね。ワゴンやカラーボックスを適当な場所に置いてもいいですが、収まりを良くするなら、可動棚がおすすめです。下段の棚をどかせば収納スペースになるので、簡単に可変できます。
最近では子供部屋のクローゼットを扉なしにする方法が増えています。扉がなくなることで、扉が折りたたまれる時にできるデッドスペースがなくなり、カラーボックスなどが出し入れしやすくなります。

将来の増改築?今の間取りをどうするかで頭を悩ませているのに、
そんな将来のことまで考えられないよー!
と思いますよね。実は、どこを増改築するのかを、改めて考える必要はないんです。間取りを作ってみて本当にこれでいいのかなという心配や、もう少しこうできればと言う不満はありませんか。今、叶えられないちょっとした不満を見つけたら、それはもう将来の増改築へのチャンスです。
では、増改築した例を見てみましょう。
パターン1:平屋での増築で子供部屋を増やす
パターン2:2階建、1階のLDKを増築して広くした
パターン3:和室を減築し、駐車場スペースを確保
基本的には1階のスペースを増築し、広くすることが多いです。特に2階に寝室があるパターンだと、老後に階段が登れず、1階が居住スペースになることが推測されます。1階のリビングや和室を広くして、仕切りを作ったり、段差を無くしたりすることで過ごし易くなります。
また、パターン3のように子供が車を買って駐車するスペースを作りたいだとか、庭で過ごす時間を大事にしたい場合などに減築することもできます。

お家作りは完璧にはいきません。
住んでみて、時が経ってからやっぱりこうしていればという要望が出てきます。
もし、お家作りの中で予算や土地の大きさなどにより叶えられない希望が、すでにわかっているのであれば、将来の自分へ可能性を残しておくのも良いと思います!
収納スペースの“質”を上げるポイント
奥行き・高さ・照明・通気性などのディテール設計
もし、収納のディテールにこだわるならこれらに注目してみましょう。
①奥行き・高さ:無印良品やニトリなど決まっている形の収納ケースがあるなら、そのケースに合わせた奥行きや高さで枠組を作ってしまうのもありです。
ただし、この場合は何を収納するのか、目的をある程度決めていないと、ケースだけがピタリとはまって見栄えはいいけど、そのケースに目的のモノが入れられないというミスが起きてしまう可能性があるので注意です。

収納と照明って関係あるの?
②照明:例えば、本棚や筆記用具などが収納されている場所に照明はいるでしょうか?照らすのならお花や家族写真が飾られている棚の方がいいですよね。WIC内の照明は野外と差がない昼白色がおすすめです。ちなみに、暖かみのあるオレンジが電球色、少し青みがかっているのが昼光色です。その間が昼白色です。
③通気性:WICでは、通気性もこだわりたいです。衣服には湿気が溜まり易いので、ウォークスルーにして通気性を良くしたり、換気をつけたり、コンセントを作って除湿機を置いてもいいですね♪除湿できるアイテムも沢山あるので、必ずしも通気性を良くしなければならない訳ではないですが、洋服を大切にしたい、長持ちさせたいとう思いがあり、こだわりがある人は注目したい部分です。
見せる収納 vs 隠す収納 のバランス
ここは、住む人の趣味や性格で自由にカスタムできるところです!存分に遊んじゃいましょう!
◎まずは何を見せたいかを考えましょう。
➡家族写真、植物、インテリア、子供が作った作品、趣味(ぬいぐるみ、アート)
◎次に何を隠したいかです。
➡書類、本、筆記用具、食器、掃除用具
◎性格も重要ですね。
➡出したらしまうをしたい。1日の終わりにリセットしたい。床に何もない方が好き。買ったものなど、収納場所が決まってないと、中々片付けられずに置いたままになりがち。
私ならこうかなと考えてみました。
夫が写真や子供が作った作品は飾りたいと思っているので、それらを飾る壁と何もない余白の壁とで分けて見せたいと思っています。
また、食器や本などはこだわっていないので隠したいモノに入ります。食器はカップボードにしまい、本は部屋の角の目立たない場所にしまいたいです。参考書やファイルなど大きさが、やや異なるため可動棚にしました。
性格的にモノの持ち場を決めたいので、収納は詰め込みすぎず、増えたものを収納できる余白を作ると安心だなと思いました。
これらは私の場合の一例です。もしあなたが食器をコレクトすることが趣味なら、ガラス扉の食器棚を作ってアンティークにするのもおしゃれで良さそうです♪
植物や花が好きなら、植物を吊るすハンギングプランツというものがあるので、それらを吊るす為のフックや鉢植えを置く場所もイメージ出来てると、水やりをする道具や肥料などのお世話セットを近くに収納できるといいですよね。
さて、ここまで読んで下さった皆さん、ありがとうございます!
結局、何から考えればいいの?と混乱した方もいるのではないでしょうか。そんな方のために、まずは今持っているモノがどれだけあって、どこに収納するべきなのかをまとめられるチェックリストを作ってみました!
収納チェックリスト
| 完了 | 場所 | 収納するモノ |
| 玄関 | 靴、傘、雨具、、、 |
ステップ1
どこに何をしまうのかを書き出してみましょう!今後増える可能性のあるモノも書いて置くとグッドです👍
ステップ2
上記で出し切ったモノ達が今の間取りで収まるのか考えてみましょう。また、現在暮らしていて溢れてしまっているモノがあるなら書き出してみましょう。
ステップ3
間取り相談をしている担当者へ、〇〇の収納を確保したい、〇〇はここにしまいたいなど要望を伝えてみましょう。
どこに何を収納するかをまとめる表を作って見ました。これはあくまでも「どこに何を収納するのか」しか表記していません。できれば、表の中のステップ2のそこに書き出したモノが収まるかまで考えてほしいです。
×玄関:靴ぐらい
△玄関:靴、傘、雨具、ゴルフセット
◎玄関:靴50足→棚10段。傘5本→傘立て20cm×20cmの幅。雨具→畳んで5段目。ゴルフセット10本→縦棚1カ所。
このようにモノを細かく書き出せると、収納のイメージがリアルになります。
まとめ
収納は考えるほど、奥が深いです。どこまでこだわるのかは人によります。
●一つは個人の好みで、何の収納を充実させたいのかを考えます。そして生活導線を意識してみましょう。行動から収納を考えると、モノが迷子になりにくいです。
●つい「今」だけにフォーカスが当たりがちです。家族の将来のことも考えてみましょう。
●収納にこだわりたい人は、収納の高さや奥行、照明の当たり具合、通気性なども気にしてみましょう。見せる収納と隠す収納のバランスが、部屋の雰囲気を変えます。
1から10まで参考にしなくても大丈夫です。まずは最後に紹介したチェックリストのどこに何を収納するのかだけでも考えておくと、モノがきちんと収まる収納が確保できると思います!

お家作りで、少しでも自分の希望を実現できるお手伝いができれば幸いです。ではまた!

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